[至極の戦術]何故ペップシティは1点ビハインド、72%対28%のポゼッションから3点を返せた?

長いですがどうか読んで見てください!


【目次】
・フォーメーション
・ペップの戦術その1
・ペップの戦術その2
・バルサ対策の究極系
・ペップの選択
・エンリケのミス
最後まで飽きないで読んでもらうために目次つけました。



今週の火曜、マンチェスターのエティハドでシティとバルサが対戦しました。
2週間前のカンプノウでも対戦した際、バルサが4−0でシティを圧倒しましたね。
ペップにとって新生シティを率いての古巣対戦でしたが結果と内容は悲惨なものでした、ペップにとって。
バルサの圧倒的な力の前に、それまで公式戦13試合で10勝2分1敗だったシティにとってこの敗戦はチーム力の成熟度、選手の力量、クラブとしての経験値など様々なレベルの差を痛感させられたでしょう。


しかし、今回は違いました。


シティは前半21分にメッシに先制を許し、支配率でも72対28と大きく試合の主導権を握られますが終わってみればスコアは3−1と逆転勝利。後半はMSNが画面に映ることはほとんどありませんでした。メッシは試合後フラストレーションが溜まったのかシティの選手に喧嘩を売るなど言われていました。
何故シティはあの劣勢から3点を奪うことができたのか?
ペップは一体どんな手を使ってシティを勝利に導いたのか?
試合を見て感じたことをまとめて見たいと思います!

バルサはこの試合にピケとイニエスタとアルバを怪我で欠きました。加入後すぐにフィットしたユムティティは問題なくピケの代わりになりますし、安定感の高いプレーを見せているディーニェも次善策としてはベストです。アンドレ・ゴメスはリーガ屈指のテクニシャンですがイニエスタの代わりとして前線を操れるかと言えばまだ足りないところがあります。それでもエンリケはチョイスできる最高のメンバーをエティハドに送り込みました。
対するシティは前回の反省を生かして0トップからアグエロを戻して1トップに置き、いつもの4−3−3でメンバーを組みました。左サイドにノリートではなくデブルイネを置いたことはこの試合でかなり鍵になりました。出場停止のブラボの代わりにカバジェロがゴールを守ります。

この試合を見たシティファンの方々はメッシの先制点が決まった前半20分あたりには前回のような悪夢がよぎっていたかもしれません。シティはバルサに多くの時間でボールを持たれ、MSNに何度も決定機を作られていました。シティ自慢の攻撃陣にボールが入ることはほとんどなく、バルサの選手は相変わらず最終ラインから前線まで円滑にボールを繋ぎシティを手玉にとっていましたね。前半30分頃に表示されたボール支配率は72%対28%。ペップは自身の代名詞であるポゼッションをこれでもかとバルサに見せつけられていました。


前半39分に何でもない繋ぎに失敗したセルジ・ロベルトがロストしたボールをアグエロからスターリングに展開し最後はギュンドアンが決めて同点に追いつきました。

この辺りからシティの陣形に若干の変化が見えました。左サイドで起用されていたデブルイネがより自由に動き始め、前線からのプレスの強度を上げ始めます。
ディーニェがボールを持った際にスターリングと移動してきたデブルイネが2人でプレスに行き、ブスケツが最終ライン近くでボールを持つとシルバとギュンドアンがここも2人でプレスに行き、制限したパスコースの先にデブルイネが走りこむなど見られるようになりました。ほんの5分程度のことですが、バルサが自陣から前線にビルドアップを成功させる回数がこの時間帯だけぐっと減りました。
プレス強度の上昇は同点に追いついた勢いによるものなのかと思っていると、後半開始早々にシティは左サイドのデブルイネを完全に中央に移動させアグエロと2トップに近い形を組ませ、その空いた左サイドのスペースには誰でも侵入していけるような形を取り始めました。
そしてその狙いは中央でブスケツを封じてビルドアップを停滞させるためのものだと試合を見て感じました。

シティは左サイドに誰も置かないような違和感のある戦術を取りますが、これが上手くハマって行きました。中央で人数をかけてプレスに行きハーフェーラインを超える前にボールを奪い切る、もしくわパスミスを誘発させる。こういった守備にシフトしたシティはバルサのポゼッションサッカーの基本「逆三角形」の中心であるブスケツに徹底したハイプレスを行い自由を奪います。ゴールにはならなくともそこで奪ってからのショートカウンターやバルサのビルドアップを停滞させることに成功しています。
中央に人を集めているのがよく分かります。

もう一つ、シティの戦術で注目したのはカウンターです。
自陣深くからのカウンターの回数的にはそんなに多くはなかったですが、カウンターの際にシティの選手はバルサの最終ラインと3列目の間のポジション(赤丸で囲った所=バイタル)に必ず選手を入れることに成功しています。この場面では始め右サイドからカウンターをしていましたが中央には既にDFとブスケツの間にシルバが入っていました。そしてこの狭いスペースでボールを受けたシルバは遅れたブスケツに倒されてファウルを貰います。
その後のデブルイネの神がかったFKは是非ハイライトでご覧に!

この場面だけでなくシティはバイタルに選手を入れるプレーを何度も試みているように見えました。
バルサにとってはブスケツは攻守における心臓です。シンプルかつ的確な配球で独特のリズムを持つバルサのポゼッションを底で支えています。
同時に彼の基本エリアであるバイタル付近はボールを持てば一気に決定機につながる危険なゾーンでもあります。このエリアを攻略することは非常に難しく、狭いスペースでプレーできる技術とバイタルを見つける戦術眼、よくギャップとか言われますけど相手守備陣のギャップを見つける眼が必要です。シルバやギュンドアンがその役割をよくこなしていましたが、ススっすとスペースに入って細かいタッチですぐに次のプレーを選択するところはシンプルにやばかったです。神ってました。
これによってブスケツのプレーは後方に意識を集中させられるのでビルドアップの回数が前半に比べかなり減ったように感じました。
74分にはさらに広大に開いたバイタルに侵入されたシティによって最後はこぼれ玉をギュンドアンに決められて3−1になりました。


①左サイドの専門を排して相手陣内の中央深くで数的優位を作りハイプレス→ボール奪取、ミス誘発
②DFと3列目のギャップに侵入し好機演出、ブスケツの意識を後ろにすることに成功


先日紹介したセルタもそうですが(セルタに見るバルサ攻略の糸口:リーガ - 欧州サッカーコラム)バルサと対戦する多くのクラブは勇敢な戦術や対策を練ってきます。
マンマーク、5バック、カウンターでぼんぼんサッカー。。。
そんな中で、、


「ブスケツ封じ」


ってのはかなり難易度の高いリスキーな戦術ですがペップはそこを突いてくるんですね。自分がトップチーム昇格させた最初の選手。その選手を封じる戦術をとることになるなんて何か凄い。。
本来相手チームのアンカーなどDFラインの一つ前の選手まで常時マークをすることはあまりないです。何故ならマークを剥がされた場合、ゲームを組み立てる選手にフリーで広大なスペースを提供することになるし、なおかつそこまで高い位置でプレスを続けるには必然的にチーム全体のラインを高く保ちかなり前傾姿勢になる必要があります。
当然相手のカウンターに晒されやすいですし、ブスケツはこのアンカーのポジションでは間違いなく世界No.1の選手です。彼をフリーで前を向かれるくらいなら始めからプレスに行かず、自陣に選手を置いて戦った方が守る際の安心感が違います。

この試合のシティはかなり変形的なフォーメーションと流動的な動きでその都度ブスケツに厳しくプレスを仕掛けました。当然人数を割くのでバルサの右サイドでセルジ・ロベルトがフリーになるシーンや手薄になった後方を突かれてMSNに危険なカウンターを食らう場面もありましたが、ペップは攻撃的に振る舞うことを選択したんだと思います。攻撃的な守り方ね。
回数こそは減りましたが相変わらずバルサのカウンターは脅威でした。ペップはぎりぎりまでポゼッションとハイプレスによる攻撃的なスタイルを貫きました。このやり方を続けたところに大きな意味がありました。継続的なハイプレスでバルサの後ろの選手は前半よりもかなり多くボールロストやエリア付近への侵入をシティに許していました。


恐らく負傷で交代した、フェルナンジーニョに変わってフェルナンドを入れたことは不幸中の幸いでした。後半に入って前傾になり始めたシティの中盤の底で振る舞い方に困惑気味だったフェルナンジーニョからより役割の明確なフェルナンドが入ったことでシティの前傾な戦い方に拍車がかかりました。攻守の微妙なバランズのズレの修正に成功します。


一方のエンリケは、、、。
広大に広がった右サイドのスペースをセルジ・ロベルトが使おうとしていましたがカウンターを恐れていたのかグズグズし、ボールの回ってこない前線からメッシが何度か下がって来てしまいこのスペースを有効に使えていませんでした。ベンチにもサイドをえぐれるようなドリブラーはおらず、苦肉の策で投入したラフィーニャとアルダ・トゥランはブスケツ周辺の厳しいプレスに奔走されるだけで全然前でプレー出来ず違いになりませんでした。やはりゴメスはイニエスタにはなれず、経験値の違いを思い知ってチェンジ。そしてエンリケは1人の交代枠を残したまま苦い表情を浮かべてジ・エンド



試合を見ていて思ったことを突発的にメモって、後で巻き戻して〜
をしていて気付いたので書いて見ました!
ペップがどんな指示を出しているのか分かりませんがこの試合のシティは前半の40分辺りから明らかに違うサッカーをして違うチームになりました。
見ていて頭が痛くなるような難解で、着いていけないシステムや戦術の変化に着いていくために画面に食らいつき、ペップが与えてくれるこういった予測不可能の連続にワクワクしていました!


対照的にこういった高度な戦術戦だと、先手を取られて次の手に悩むチームの指揮官ってかなり目立ちます。色んなミスや迷いみたいなのが。
改めてペップってすごいなと、感じました!
そんなペップでも負けたり悩んだりするところがまたいいですね笑



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